5月レポート

レインボーパレード

多様性を認め、誰もが公平にチャレンジできる社会を目指していく。これから少子高齢化を迎える日本社会において最も大きなテーマであると認識している。人種、国籍、性別、障がいといった、今なおバリアが存在する社会の中で取り残されてきた人たちが、社会の一員として活躍できる時代になりつつある。その応援の気持ちをもってレインボーパレードに参加してきた。レインボーカラーは、世界共通のアイコンである。レインボーは虹の7色を表すものだが、さまざまな個性や表現を認め合うメッセージが込められている。
スポーツ界で長年活動してきた中で、個人の特性や指向を自由に表現できる環境がなく、思い悩み苦しんだ仲間が潜在的には存在していたのではという考えが私の問題意識であり、この活動を応援している理由でもある。

国会ではこれまで野党発案による差別禁止法という議員立法が審議されたが否決されたという過去がある。一方、与党はLGBT理解増進法として議論し進めている。LGBT関連有識者による勉強会を通じ、個人の多様な性自認、指向があることを知り、まずは社会の中で周知され、合わせて理解がより深まることが必要であると考えている。いずれにせよ、レインボーパレードのようなメッセージを社会に発信しつつ、今の時代背景にあった整備を進めていきたい。

 

南北首脳会談

本年4月末、文在寅大統領と金正恩委員長による歴史的会談が行われた。この会談の実現に向けた両国の動きの中で平昌冬季五輪が大きく影響していたと私は考えている。開会式をみれば南北統一チームによる入場行進、女子アイスホッケーチームにおいては南北合同チームの結成、韓国・北朝鮮それぞれから高官が出席し和やかな閉会式が開かれるなど、至るところに南北融和の姿を目にした。あまりの変貌ぶりに驚いたのは私だけでないだろう。

オリンピック憲章には、五輪大会を政治利用しないという一文がある。オリンピック・パラリンピックは、あくまで、スポーツを通じた国際平和を目指す祭典である。だからこそ、世界中の人々は純粋な気持ちで競技を観ることができる。しかし、平昌大会においては、様々な政治的動きがみられた。具体的には、IOC会長による北朝鮮への働きかけや、南北合同チームの承認など、大会を利用した南北の融和政策が見てとれた。平昌大会をきっかけに、南北の政治の動きが加速したとみられる。

パブリックディプロマシーという言葉がある。市民広報というように、文化による国のメッセージ発信や、国のイメージを扇動することだが、オリンピック・パラリンピックはこのパブリックディプロマシーを実現する最大の社会装置であるともとらえられる。南北選手による和やかな表情をそれぞれの国民が目にすることで、国民感情としても、争いから融和へと近づき、導かれるだろう。

今回、いたるところで五輪の政治利用がニュースになった。当然である。しかし、我々が注視しなければならないのは北朝鮮の今後の動きである。決して紛争が解決したわけではない。隣国の朝鮮半島での動きは我が国の平和と安全にとって、最も重要なテーマであり、今後の展開は全く予想がつかない。各国のリーダーによる駆け引きが熾烈に行われる一方で、国際協調の観点からスポーツ交流やお互いの国を尊重し理解し合う動きは不可欠である。

我が国においても2020年をどのように迎えるのか、外交においても各国のリーダーが一堂に会す絶好のチャンスである。日本が世界の中でどうリーダーシップをとるのか。国際社会の平和と安全を守る切り札となるか、今回の平昌五輪、そして南北首脳会談から学ぶことができた。今後もさまざまな視点をもって2020年東京大会を考えていきたい。

日大アメフト問題

自民党スポーツ立国調査会では、2年ほど前からアメリカの大学スポーツを統括する全米大学体育協会(NCAA)をモデルにし、我が国の大学スポーツを健全かつ教育的価値を高める意味において、日本版NCAAを整備する方向で議論が進んでいる。NCAAの主な機能は、学生スポーツにおける安全管理の徹底、スポーツと学業の健全な両立、学生スポーツ自体のガバナンスが機能した運営などであり、それらを管理するところにある。しかし、これまでの日本国内の大学スポーツは、学生の自主的な活動として、学校本体の外部に位置づけされた課外活動の一環として扱われてきた。当たり前だが体育会と言われる大学スポーツ部もいうなれば組織の一つではある。そのため、組織として、公正なルール、公平な人事、透明性のある会計などは当然求められるはずだが、これまで体育会は伝統やチーム文化と称し、外部から遮断されたブラックボックス化した中で運営が行われてきた傾向が強いと言われている。そのため、昨今はパワハラや、不正な会計といった問題が至る所で顕在化してきた。そしてまさに今、時代に合った大学スポーツの在り方を整備しようとしている矢先にこの日大アメフト問題は発生した。

今回の事案は、大学スポーツの在り方を問われるだけにとどまらず、スポーツの根幹を揺るがす社会問題に発展した。これほど大きな問題となった背景には、選手生命を脅かす悪質な反則であったこと、大学本体の対応が不誠実なものでかつ後手に回ったということがある。 私は、今回の問題の大きな要因は、大学スポーツの歴史の中において、体育会が課外活動として発展してきたが故に、チームにおける責任の所在が不明確となり、チームが外部との接触が限られることで、部長・監督・OBといった特定の個人に運営権が偏り、正常に判断ができない組織となっていった点にあると考える。現代社会の組織において最も重要視されるコンプライアンスが遵守されずガバナンスも欠落していたと言わざるを得ない。

今後国会では日本版NCAAの議論が進んでいく。1964年東京五輪のレガシーの1つとして、大学スポーツはじめ、地域スポーツ、学校スポーツが経済成長と共に発展してきた。今まさに、2020年東京大会のレガシーとして新たなスポーツ文化が醸成され、その一つとして大学スポーツが進展し、学生にとってスポーツが教育の一環として安全に、そして健全に実行されていくことが必要である。また大学本体の運営にとって、スポーツが経営的な強みとなる正規な事業として扱われるよう議論を深めていく。

 

オリパラ関連4法案

1.  2020年7月24日は2020東京オリンピックの開会式が行われる日である。カレンダーに目を移すと、この日は夏休みに入って一回目の週末でもあり、都内の交通渋滞は過去のデータからも相当な混雑が予想される。また開会式においては世界中からVIPが訪れるが、首都圏の各空港から新国立競技場のある都心へのアクセスが困難を極めるだろう。解決策としてオリパラ特措法の一部を改正し、開会式前日の7月23日、当日7月24日、大会が終了し選手・関係者が一斉に帰途につく閉会式の翌日8月10日を祝日とし交通量を減らし対応を図るものである。2020年7月20日の海の日、10月12日の体育の日、8月11日の山の日、それぞれの祝日を2020年度に限って上記へ移動させるものである。また2020東京大会・ラグビーワールドカップ共通の対応として、電波法の特例を設け両大会期間中無線局の電波利用料を減免し、各国のメディア等の負担を減らし、より円滑な競技運営を目指していく。

2.  スポーツ基本法の一部を改正し、「スポーツ」の語を基本的に用いるべく、「国民体育大会」を「国民スポーツ大会」に改め、よりスポーツ文化の醸成を図るものである。合わせて「日本体育協会」は「日本スポーツ協会」と改められる。

3. 国民の祝日に関する法律を改正し、1964年に設けられた「体育の日」を2020年より「スポーツの日」と改め、スポーツを楽しみ、活力ある社会の実現を目指していく。

4. スポーツ界におけるインティグリティ(高潔性、公正性)が求められている中で、スポーツにおけるドーピングの防止活動を推進する法案が提出される予定である。アスリートによる不正はあってはならないし、2020年を契機にスポーツの透明性をしっかりと確保するべく、国としてもドーピング検査員の人材育成や、ドーピングに関する施策を推進統合的に推進するものである。これまで選手個人、競技団体に任されてきたドーピング領域を国もしっかりサポートしていかなくてはならない。

以上、2020年に向け法律の整備を進んでいる。今後さらに、競技場建設、輸送、ボランティアといった、まだまだやるべきことが山積している。

オリンピック開会式まで800日余り。重要なことは国民の理解を得ながら準備を進めることである。2020をオールジャパンで迎えるためにも、本4法案を今国会で成立させ、着実に前進させていく。

 

2020年東京大会開催国枠

5月末、日本バレーボール協会から、ビーチバレーボール競技における2020東京大会日本代表チームの選考基準が発表された。いよいよ2020年へのスタートラインが引かれたわけである。主な選考基準を記すと、出場全24チームのうち、世界オリンピック予選大会から2チーム、2019世界選手権から1チーム、世界ランキング15位以内などは、これまでのオリンピック出場基準と大きく変更はないが、日本には開催国枠が別途1枠保証されている。

1996年のアトランタオリンピックから正式種目となったビーチバレーである。これまで日本チームが出場できた(出場権を獲得)大会は過去6大会のうち男女合わせても3大会にとどまる。いわゆるチーム競技は出場枠が、個人競技よりさらに限定されるため、予選を勝ち抜き出場権を獲得することは年々熾烈さを増している。その中で日本は初めて開催国枠を使い確実に1チームが出場できる。選手にとって、出場権を懸けた戦いは競技人生の中で最大の目標になることだろう。だからこそ競技団体は、開催国枠の選考基準、選考手法は公平性、透明性が求められるのは言うまでもない。

今回、日本バレーボール協会は、開催国枠の日本代表選考大会を開催し、優勝チームに付与することを決定した。つまりオリンピック出場権を懸けた大会が、日本で初めて開催されるわけである。選手はもちろんのこと、スタッフ、ファン、スポンサーなどビーチバレーに関わる多くの人々がその一枠を目指すだろう。競技団体の責任として、協会が決定したこの選考ルールをより正確に、そして誠実に選手、関係者に伝えるべきである。例えば早い段階での説明会などを開き意見交換の場を設け、よりクリアに協会と選手・関係者との意思疎通を図っておくことも有効ではないだろうか。アスリートファーストを考え、2020年大会をよりよいものにするためにも、選手と協会双方の風通しの良い関係性が不可欠である。