12月レポート

12月10日、第197回臨時国会は閉会した。10月24日に召集され、予定した48日間の会期を無事終えることができた。補正予算、法案審議と緊張の糸を張りつめた国会審議を全力で駆け抜けることができ、改めてお支えいただいた皆さんへ感謝を申し上げたい。

国会終盤、焦点であった改正入管難民法の審議では野党との折衝がピークを迎え、不安定な国会運営に陥る場面もあったが、参院法務委員会のメンバーはじめ、丁寧な対応により無事成立を迎えることができた。振り返れば、本国会で政府が新規に提出した法案13本すべてが成立し、成立率100%と与党自民党としてしっかり安倍政権を支えることができた。

「改正出入国管理・難民認定法」

全国的な人手不足の中、優秀な外国人材にも日本で仕事につき活躍してもらうための整備が日本経済の喫緊の課題であり、その解決の手段の一つが本法案の目的でもある。主な内容は、人手不足が特に深刻な14業種に限定し単純労働を含めた就労を認める「特定技能1号」と、さらにその中で5つの業種に限っては、家族滞在や在留期間更新が可能になる「特定技能2号」の資格が整備され、諸外国から我が国日本が働きやすい、さらには日本で働きたいと思ってもらえるような、外国人材に対する環境整備を行う法案である。2019年4月に施行され、向こう5年間で約35万人の受け入れを想定している。

「改正漁業法」

長きに渡って日本の産業を支えてきた水産業のさらなる活性化を目指す本法案は、約70年ぶりの抜本改革で衰退傾向にあった水産業を成長産業へ転換させる狙いがある。日本の漁業生産量は1984年の1282万トンをピークに2017年は430万トンと3分の1まで減少。その原因として考えられてきたのが、漁獲量をコントロールしてこなかったこと、諸外国の乱獲により資源が減ったことなどがあげられている。一方、世界の水産業は順調に推移し成長産業として右肩上がりを続けており、日本と対照的である。 本法案ではまず、年間の漁獲量の上限を魚種ごとに決める「漁獲可能量(TAC)制度」の対象を現在の8種から増やし規制を強化する。また、漁船ごとに漁獲枠を割り当てる個別割り当て方式を取り入れ、管理の責任を明確にしていく。 もう一つの柱が、これまで各地の漁業組合に優先的に与えていた漁業権の規定を見直し、有効活用されていない漁場に新規参入しやすい整備を行い、新たな担い手を確保していく。 以上のような対策をとることで、70年間手付かずであった水産業の活性化を力強く後押ししていけると期待している。

「チケット不正転売禁止法」

これまで社会問題化していた、いわゆるチケット高額転売問題の解決の糸口となる法律である。2020年東京大会を控え2019年6月より施行される本法案は、オリパラに限らず、コンサート、スポーツイベント、演劇等々、様々なエンターテイメントへ多くの方のアクセスが円滑化されると期待されている。これまでダフ屋行為と言われるチケットの買い占め、高額転売が見逃されてきた。今回、チケット流通に関して規制を設けることで、不正の禁止はもちろんだが、興行主側にも責任が発生することで、例えばこれまでの紙チケットから、電子チケットへの移行促進、また二次流通も管理できる環境整備が整うなど、新たなチケット販売システムが進んでいく。議員立法の本法案により、エンタメ産業の活性化が進むことを願っている。

「スポーツ関係予算」

31年度予算の概算要求において、スポーツ庁関係予算は前年度比10億円増の、総額350億円が予定されいる。まず我が国の厳しい財政状況において予算増を勝ち取ることは大変厳しいものがあるが、その中で2020大会へのラストイヤーとして、政府としてしっかりと措置をしてくれたことに改めて、2020大会への期待とその責任を感じる一人である。 詳細を見ていくと、特出すべきは競技力向上予算、いわゆる強化費の約5%アップである。およそ100億円が予定されており、メダル獲得を目指すアスリート支援から、アスリート発掘、育成等にあてられる。このスポーツ強化予算は諸外国において扱いが異なる点に注目が集まる。アメリカのように国の予算による強化は限定的で、あくまで各競技の自主財源をもとに強化普及をリードする国のシステムもあれば、日本と同じように国庫、公営くじ等の資金をあてるドイツ、オーストラリアなどがある。ポスト2020で様々な産業が反動減を懸念しているがスポーツ界も同様で、強化費が減額されるだろうと心配の声をよく聞く。しかし考えなければいけないのは、国からの補助金をあてにする強化だけでは世界で取り残されていくし、我が国の状況においてもスポーツの在り方を見直す時期に来ているのは明白の事実である。各競技団体のガバナンスの強化、そして財政面の強化は何もスポーツ界に限った課題ではなく、全産業で求められる点である。この大きなチャンスを逃すことなく、スポーツの産業化に表されるように新たな日本スポーツ文化の醸成に私も汗をかいていく。