スポーツ基本法改正
スポーツ基本法が改正されます。
2011年に制定されたスポーツ基本法によって、スポーツ庁の設置、2020東京大会の実施、日本代表や各世代の競技力向上など、地域スポーツからトップスポーツのすべてを包含した我が国のスポーツ基本法が社会に果たした役割は大きなものがありました。

しかし、わずかこの14年間で、スポーツを取り巻く社会環境は大きく変化しました。
不確実性の高まる国際社会の影響、少子高齢化社会による諸課題、また、社会から求められる健康長寿や共生社会、デジタル化社会など、これまで以上に国民生活は多様化し、さらには国民一人ひとりのウェルビーイングが求めれる時代となっています。
こうした時代の要請に即した形でスポーツ基本法改正の議論が国会でスタートしていました。
特筆しておきたいのは、この会議体は各政党からスポーツ政策に積極的な議員が集まり、党派を超え超党派で議論されてきた点です。スポーツという文化はそもそも自発的なものであり、多様な価値観を有し、さらに社会に様々な影響を与えることから、スポーツに関わる法律は国会で全会一致が基本原則であるという意思がこれまで存在してました。
その背景から、超党派間での議論は丁寧にかつ闊達に行うことができたと思います。結果、令和7年5月に超党派スポーツ議員連盟において全会一致で了承され、議員立法として国会へ提出される運びとなりました。
スポーツに関わる法律を振り返ると1961年にスポーツ振興法が制定されます。この法律は、日本で初めてスポーツが体系的に法律に規定され、スポーツは国民生活を向上させるものであり、加えて地域における責務を示すものでした。ポイントは、1964年の東京五輪に向け、国際基準を満たした国内のスポーツ施設整備を進める点にありました。それから50年が経ち、社会情勢は大きく変化し、加えてスポーツが果たす社会の役割自体も大きく進化してきました。
それらに対応すべく、また日本が2020年に目指した2度目のオリンピック招致を成功させる目的もあり、2011年にスポーツ振興法からスポーツ基本法へ改正され、今まで以上に社会におけるスポーツの位置づけが明確化され、スポーツを通じ多様な価値が提供される社会の実現に向けた取り組みを推進することが明記されます。
言い換えれば、我が国のスポーツ政策史というのはまだ10年あまりであって、今後、スポーツよって社会的インパクトを与える可能性が大きくあるとも言えるのではないでしょうか。
私の個人的な理解ではありますが、日本スポーツが存在してきた歩みの一部を見ると、
- 体育を起点とし、競技スポーツの競技力向上のために特訓・訓練といった考えの上に実施(国際大会でも一定程度結果を出す)
- 教育の一部としてもスポーツの練習が認められる
- 1964年東京五輪開催時、国際基準を満たすスポーツインフラを整備
- 国内では多くの全国大会が整備され、日本一を目標にスポーツが盛んになる
- 日本の人口ボーナス期、スポーツ場面において過度な負荷をかけ、耐えることが是とされる。
- 国際社会では経済成長が進み、スポーツ文化が世界中に展開される
- 国際大会の競技力は向上し、スポーツ科学、スポーツビジネスが誕生する
- 競技ごとに日本の競技力や成績、結果にも変化が起こる
- 4年ごとのオリンピックによって、スポーツ発明が起こる。スポーツ産業、デジタル技術、ヘルスケア、エンターテインメント等
- スポーツを通じた共生社会の実現、持続可能な社会など、社会価値創出機能として、スポーツに求めらる価値が向上
- スポーツビジネスは、インターネットやデジタル技術と融合し莫大な産業規模となる
- スポーツ産業に関わる様々な課題が山積
といった変化のスピードが早い社会にあって、スポーツもそれに準じて変化が求めれられています。
これまで、スポーツは競技力の向上や成績を追い求める、競技スポーツに寄った特定の人だけに限られたものと捉われてきましたが、近年では「スポーツは、する・みる・ささえる・あつまる・つながる」これらすべてがスポーツであると定義され、様々な恩恵を享受できるものと理解が進んでいます。
その上で今回の基本法改正となりますので、日本社会に対し良い影響と大きな価値を生み出してくれることを期待しています。
主な改正点
- スポーツを活用した地域振興・社会課題の解決を推進
- 誰もがスポーツにアクセスできる共生社会
- スポーツインフラ整備による街づくり
- 地方公共団体におけるスポーツを活用した行政の推進
- アスリートへの誹謗中傷対策
- スポーツと、文化・芸術など他分野との融合
- スポーツDXの活用による新たな産業の創出
- 国際大会の適正な招致
- スポーツに係る不正防止
など、多岐にわたる項目が新たに追加されます。
言い換えれば、スポーツを核として多様な方々が参画する社会に近づいていくということになります。
スポーツ界が問い続けている点は社会的価値の創出です。その実現に向けさらに高度化し、多様化することで日本社会の発展や課題解決に貢献できるよう、スポーツ政策をさらに磨き上げたいと思っています。