2020 Vol.4

ODA(政府開発援助)等に関する特別委員会

ODA特別委員会において質問に立つ機会を得ました。

以下、要約したものです。

「新型コロナウイルスの感染症」拡大防止策について

Q. 「新型コロナウイルスの感染症」の影響でJICAの世界に派遣されている隊員の方々に帰国指示が出たという報道を拝見した。現在の状況は?

A. 本清耕造 JICA理事

海外で活動するODA事業関係者が「新型コロナウイルス感染症」に感染するリスクが急速に高まっている。この状況も踏まえて、JICA関係者のうち脆弱な状況に置かれている海外協力隊、長期専門家の中でも高齢者や基礎疾患保有者、妊婦又は随伴家族等について予備的に一時帰国させる方針。

Q. 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため取組が続いている。日本は、国際的に「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」を牽引してきたが、UHC達成のために感染症対策など保健分野の開発援助にどのように取り組んできたか? また、今後どのように取り組んでいく所存か。

A. 茂木敏充 外務大臣

我が国は、全ての人が負担可能な費用で、基礎的な保健サービスを受けられる状態の「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」を提唱し、世界各国における達成を後押ししている。UHCが達成されることは、各国の国内の保健システムの強化を通じて、今回のような緊急時の対応強化にもつながるものと考えている。感染症対策含む国際保健の更なる推進のため、保健システム強化に向けた保健人材の育成等の二国間の援助に加えて、グローバルファンドや、Gaviワクチンアライアンス等、感染症対策の高い専門性を有する国際保健機関への資金拠出を行っている。さらに、昨年、我が国はGaviワクチンアライアンス増資準備会合を主催する等、国際的な議論もリードしてきている。今後も、UHCの達成を目指して支援を行い、我が国としてリーダーシップを発揮していきたいと考えている。

国際協力を通じた日本のプレゼンス向上について

Q. 国際社会における協調は重要であり、相互理解を深めながら日本国としての責任を果たしていくべき。その点で、2019年は特に重要な年であったと認識している。今後、国際協力の方向性、責務を示す意味で、2019年大阪サミットにおける「大阪首脳宣言」の発出に際し、日本のリーダーシップはどのように発揮されたのか。

A. 茂木敏充 外務大臣

「G20大阪サミット」では、質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則を基礎として、質の高いインフラ投資こそが途上国の自立的かつ持続的な発展に寄与する、こういった認識の下で、新興ドナー国も交えて日本が議論を主導して、四つのポイント、開放性、透明性、経済性、債務持続可能性といった日本が重視する要素を含みます原則を新興ドナーも含みますG20首脳間で承認をした。

また、喫緊の地球規模課題の一つである海洋プラスチックごみ対策として、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにすることを目指します大阪ブルー・オーシャン・ビジョンをG20首脳間で合意をした。

これ以外の分野でも自由貿易の推進、イノベーションを通じた世界の経済成長の牽引と格差への対処、SDGsの達成に向けた貢献等、多くの分野でG20としての力強い意思が大阪首脳宣言を通じて世界に発信できたことは、世界経済の安定的成長や国際社会が直面する課題解決に向けて極めて有意義であったと思っており、それを通じて更に日本の存在感、プレゼンスも高まってきていると考えている。

自由で開かれたインド太平洋に向けた取組みについて

Q. 昨年、ケニア・モンバサ港を視察し、海洋の治安維持や経済の連結性強化の観点からも「自由で開かれたインド太平洋」が重要であると感じた。大臣所信では「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け,質の高いインフラ整備を推進していくとしているが、質の高いインフラの具体的な内容及び今後の取り組みは?

A.鈴木秀生 国際協力局長

自由で開かれたインド太平洋の実現のためには、物理的、人的、制度的な連結性を強化し、人、物、金の流れを活性化させるということが不可欠と考えている。G20大阪サミットにおいては、開放性、透明性、経済性、そして債務持続可能性といった要素を含む質の高いインフラ投資に関するG20原則の策定を主導した。今後は、関係国や開発金融機関と協力し、このような原則の具体化、国際スタンダード化を推進していくほか、途上国の公的債務、リスク管理などの能力構築支援も実施していき、自由で開かれたインド太平洋、質の高いインフラを具体的に支援していく。

ODAによる支援先国、地域の自立・発展について

Q. 国際社会や開発途上国の情勢の変化等も考慮しつつ、また、必要に応じて民間資金やNGOも活用すべきと考えるが、開発途上国の主体的な成長・発展を実現するため、どのようにODAを計画・実施しているのか?

A. 鈴木秀生 国際協力局長

援助の実施に当たっては、相手国政府との緊密な調整の下、その国の開発ニーズや開発政策を踏まえて、我が国の援助重点分野、方向性を示す国別開発協力方針を策定し、これに沿った具体的な案件を計画、実施している。

この国別開発計画策定に当たっては、相手国の自主性、オーナーシップというものを最重視しており、政府のみならず、NGOや企業、地方自治体を始めとする様々な担い手の活躍が期待されている。その観点から、国別開発協力方針の策定に当たっても、NGOや企業などの意見を踏まえて策定している。

JICA海外協力隊について

Q.海外協力隊員による任期中の取組や現地での貴重な経験を外交政策に活用するための仕組みはどうなっているか。

A.鈴木秀生 国際協力局長

JICAでは、事務所職員が隊員を定期的に訪問し、活動をフォローするとともに、隊員から活動内容や提言を含む定期活動報告書の提出を受けて、隊員の経験、提言を将来の案件形成等に反映させる仕組みを整えている。

また、大使館では、大使公邸に隊員を招待した意見交換の実施や、各種大使館事業、業務への隊員参加の確保を通じて、隊員の生きた経験、声を吸い上げて、ODAを含む外交政策への参考とするなどの様々な工夫を行っている。

Q.JICAの隊員を経験したやはりその先のキャリア、出口の部分というのが非常に重要だと考えるが、JICA隊員のそうした人材活用についてどのように取り組んでいるか。

A.鈴木規子 JICA理事

JICAは、帰国後の隊員が日本国内でも活躍できるように、帰国後のキャリア相談、各種研修を実施している。また、加えて、免許、資格等の取得、これを促進する支援を設け、支援する制度を設けて、キャリアアップの支援を行っている。大学、自治体及び教育委員会等と協力して、入学や採用を優遇する制度の導入、帰国隊員が日本国内で地域の国際化や多文化の共生の推進に貢献できる環境整備も行っている。

ODAはじめ、国際協力の情報発信について

Q.日本が国際協力を行った開発途上国において、支援の効果をしっかりと我が国の国益に還元するためには、現地での日本の国際協力に対する理解を高めていくことが必要である。現地では日本からの支援についてどのような広報がなされているか。

A.鈴木秀生 国際協力局長

専門家派遣、海外協力隊の積極的な活用や人材育成、これは我が国の顔が見える支援として最も効果的な方法の一つ。資金協力においても、我が国の協力によって建設する施設の起工式や支援物資等の引渡式の際には、先方政府の高いレベルの出席を得ることで現地メディアにも大きく取り上げられている。さらに、現地メディアによる我が国の開発協力事業の現地視察を行うプレスツアーの実施、在外公館による講演活動や現地語の新聞やインターネットによる発信等を通じ、海外におけるODA広報に積極的に取り組んでいる。

Q.日本が国際協力を推進していくうえで、その役割と必要性について国民の理解を得ていくことは重要であるが、国内に向けた広報活動はどのように行われているか。

A.鈴木秀生 国際協力局長

ホームページやSNSによる発信、全国の学校でODAに関する授業を行うODA出前講座といった取組に加え、国内最大級の国際協力イベントであるグローバルフェスタを毎年開催している。 さらに、昨年は人気アニメの鷹の爪団のキャラクターをODAマンに任命いたしまして、関連の広報動画を東京メトロのトレインチャンネルやユーチューブといった新たな媒体を通じて広く伝える取組を実施。

スポーツと開発について

Q.スポーツ分野における開発協力を積極的に私は進めていただきたいと思っているが、これまでの事例も踏まえて、どういった理念に基づいて取り組んできたのか?

A. 鈴木秀生 国際協力局長

ODAによるスポーツ分野への支援は、重点課題の一部である、人々の基礎的生活を支える人間中心の開発を推進するために必要な支援の分野の一つとして挙げている。日本は南スーダンにおいて国民結束の日と称されるスポーツ大会の開催運営の支援を2016年から継続して実施。南スーダン全国から集まった多数の民族出身者の交流や相互の信頼を促し、市民レベルの社会的な結束を高め、長い紛争を経験した南スーダンにおいて、スポーツを通じた平和構築に貢献している。また、参加者の一部が東京オリンピック・パラリンピック競技大会陸上競技の南スーダン代表候補選手となるなど、この支援は、同国の国際的に活躍するスポーツ選手育成にも貢献している。

Q. 2014年からスポーツを通じた国際協力、目標が100か国、1000万人の方々に日本からスポーツを提供する「スポーツ・フォー・トゥモロー」というプログラムが2020年度までの時限的なものだと認識している。今後も続けて頂きたいが、今後のスポーツ外交の展望は?

A. 山中修 官房参事官

「スポーツ・フォー・トゥモロー」は2020年までに100か国以上の国と地域において1000万人以上を対象とするスポーツを通じた国際貢献策として実施しており、昨年9月に、この目標を予定より早く達成した。本年も引き続きこのプログラムに取り組んでおり、2021年以降も「スポーツ・フォー・トゥモロー」で培った人脈を生かして、世界のアスリートの日本招聘も含め、一層のスポーツ交流を進めるべく積極的に努力していきたい。

Q.2020年東京大会の開会式等の機会には世界各国から首脳級の要人が日本を訪問すると予想される。この機会を捉えて積極的に首脳外交を展開すべきだと考えるが、外務省の見解は?

A. 茂木敏充 外務大臣

この機会を活用して、積極的な首脳外交も展開をしていきたいと思っている。また、2020東京大会の機会を活用して、東日本大震災から復興した日本の姿を世界にアピールするとともに、現在世界が直面している新型コロナウイルスに対して、国際社会が協調して打ち勝ったあかし、こういったものも発信していく意義は極めて大きいと考えている