「大会組織委員会のこれからに思うこと」
東京オリンピックの開会式は本年7月23日に予定されています。残すところ160日あまりです。
2月に入っても、新型コロナ感染拡大の収束が見えず(緊急事態宣言によって感染者数は減少傾向)、未だ続く医療提供体制の逼迫に危機感を持っています。
そうした状況と平行するように、年が明けてから五輪大会への期待値も大きく下がっていて、中止・延期すべきが8割近くの上るとの報道もありました。
そしてここに来て、大会組織委員会会長から大変残念な発言があり、国内外で大きな反響が起こり今なお続いています。アスリートをはじめ、五輪大会に期待していた方々は大きく肩を落としたことと思うし、私もその一人です。
この発言は五輪本来の目的にそぐわないものであり、私は賛同できるものではありません。
開催の可否も不透明であるようなニュースを毎日見ながら、大会本番へむけ目の前の準備に徹しているアスリート、準備を進める大会関係者へも大きな影響を与え、大会への信頼を損ねた結果となりました。
本来、五輪大会は、オリンピック憲章に書かれている人類共通の価値観や理念を、それらに賛同する全ての人々と共有し、スポーツ競技大会を通じ世界へ発信していくことにあります。
つまり、多様性や調和といった基本的価値、加えて持続可能性のある社会の実現といった普遍的価値を創造、実現していくことであり、国際社会が賛同し続けてきた歴史が五輪にはあります。
この発言に対し国際世論が関心を示している理由に、現代の社会において特に重要とされる多様性や人権といったテーマはまさに五輪精神と共通するものであり、その重要性に逆行するような点に強く反応した結果だと思います。
確認しておきたいのは、大会の実現・成功は、五輪の理念への共感・賛同があってこそであるということです。
この点が毀損されたと思われている今、組織委員会がもとめられるのは、原点に立ち戻って五輪大会本来の目的を再認識し、しっかりと国内外へその姿勢を示すことにあると私は思います。
ハイレベルな調整、国際社会との対話、予算の確保といった組織委員会が重責を果たすフェーズから、開会式まで160日、フェーズもいよいよ変わってきて、政府によるコロナ対策が重要となっている局面であるとの見方もできます。
その上で組織委員会の役割は準備における最終調整と、アスリートをはじめ、国内外からの大会への共感、賛同をもう一度構築することが大変重要だと私は思います。
そのために必要な対応を、組織委員会へ求めていきたいと思います。